ペースランナーはつらいよ…だけど楽しい

ペースランナーを務める野田正明さん(左の赤いバルーン)
野田正明さん

高橋尚子杯ぎふ清流ハーフマラソンでは、ペースランナーも走ります。目標タイムを設定しているランナーだけでなく、初心者もペース配分の指標となりそうです。

ペースランナーの完走時間は、1時間45分、2時間、2時間15分、2時間30分、2時間50分。完走時間を書いた前後ろのゼッケン、風船をつけて、一定のペースで走ります。岐阜県のランニング愛好者でつくる「Feel岐阜」に主催者が依頼。約20人が完走時間ごとに数人に分かれて走ります。

23年に続き、24年4月28日の大会でもペースランナーを担う野田正明さん(62)は、県立岐阜各務野高校の校長。マラソン歴20年です。「目標があると走りやすい。少しでも皆さんの走りやすい環境をつくりたい」と意気込みます。

学生時代はハンドボール選手。体育教諭としてQちゃんの母校、県立岐阜商業高校に赴任したこともあります。県教育委員会に勤務していたときに運動不足を感じ、ランニングを始め、いびがわマラソンに出場しました。「スタート前、久しぶりの緊張感がうれしくなりました。ハンドボール試合前の勝つか、負けるかに似たものがありました」

とはいうものの、走るのは苦しい。「自分との闘い。ペースランナーで走っていて、ペースを落とし、歩きたくなるときがあります。そういうわけにはいかないから、走る。やめたくなるけれど、やめられない」

ペースランナーは自身の完走時間より15~30分ほど遅い時間で走ります。野田さんのベストタイムは、ハーフ1時間32分、フル3時間26分。「いずれも40代のときで、今はハーフで2時間切れないと思います」。24年も2時間30分で走る予定です。

一定ペースで走る必要があるが、混み合うところもあり、速さを維持するのは難しい。遅く走る分、苦しい時間が続きます。「こんなにえらいことはもうやめよう、と思いながら走り、走り終わると達成感が湧き、次もと思います」

ランナーに「がんばりましょう」「ついてきてください」とエールを送るのは、自分に対する奮起でもあるといいます。走った後は、イベントや飲食店を回り、お祭り気分を楽しみます。

健康を第一に考えるなら、10キロをゆっくり走るのがいいそうです。フルマラソンは、体に痛みが出る上、練習しても30キロの壁-予想通りにいかないことがあります。40代で出場したホノルルマラソンで、「この調子なら、3時間30分ぐらいで完走できそうだと序盤で喜んでいたら、とんでもない。25キロぐらいで急に壁がきた。膝が痛くて走れません」。初めて4時間を切ったときも、エネルギーが切れ、体に痛みが出た。フルは走ってみないと分からないといいます。

フルマラソン出場前、「僕は2カ月前から30キロを数回こなします。そうでないと走れません」。休日の練習が必要になるため、この数年、フルから遠ざかっている。「ハーフマラソンを2倍にするとフルというわけではありません」。ハーフを完走し、想定外を乗り越える精神力を上げていきます。

駅伝とも異なります。マラソンは自分でペースを落とせますが、駅伝は落とせません。10キロの大会ではペースが速くなり、フルは距離がある。「ハーフは距離、時間ともにバランスが取りやすい」と感じます。

近年はペースランナーを採用する市民マラソンが増えています。ぎふ清流ハーフマラソンの打診を受けたときには、「ペースランナーに憧れていたので、僕らもやれるのか、とうれしくなりました」。ハーフ2時間切りを目標にしている人は「いきなりは難しく、まずは2時間15分、2時間30分を目指してほしい」。ペースランナーとしてランナー全員の完走を見守ります。